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高松高等裁判所 昭和36年(ネ)314号 判決

控訴人兼被控訴人(原告)

江川栄子

外三名

代理人

岡田洋之

被控訴人兼控訴人(被告)

伊勢長一

代理人

岡林一美

主文

一審被告伊勢長一の控訴を棄却する。

原判決(一審被告伊勢長一に関する部分)を次のとおり変更する。

一審被告伊勢長一は、

一審原告江川栄子に対し金四七五、一二九円及びこれに対する昭和三〇年八月一七日以降完済に至るまで年五分の割合による金員、

一審原告江川幸子に対し金二三、四〇九円及びこれに対する昭和三一年一月二一日以降完済に至るまで年五分の割合による金員、

一審原告江川達司、同江川恵里子に対し各金四八六、八三四円及び内金四七五、一二九円に対する昭和三〇年八月一七日以降、内金一一、七〇四円に対する昭和三十一年一月二一日以降各完済に至るまで年五分の割合による金員

の支払いをせよ。

原告らのその余の請求を棄却する。

訴訟費用は、第一審(ただし、一審原告らと一審被告伊勢長一との間に要した分)及び第二審を通じてこれを二分し、その一を一審原告らの負担とし、その余を一審被告伊勢長一の負担とする。

この判決は、一審原告ら勝訴部分に限り、一審原告江川栄子、同江川達司、同江川恵里子において各金一〇、〇〇〇円、同江川幸子において金五、〇〇〇円の担保を供するときは、それぞれ仮に執行することができる。

事実

一、一審原告ら代理人は、「原判決中一審原告(以下単に原告という)ら敗訴部分を取消す。一審被告伊勢長一(以下単に被告という)は、原告江川達司、同江川恵里子に対し各金一、一二五、〇〇〇円及びうち金一一〇万円に対する昭和三〇年八月一七日以降、うち金二五、〇〇〇円に対する昭和三一年一月二一日以降各完済に至るまで年五分の割合による金員を、原告江川栄子に対し金一一〇万円及びこれに対する昭和三〇年八月一七日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を、原告江川幸子に対し金五万円及びこれに対する昭和三一年一月二一日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を各支払え。訴訟費用は第一、二審とも被告の負担とする。」との判決並びに担保を条件とする仮執行の宜言を求め、かつ、「被告の控訴を棄却する。控訴費用は被告の負担とする。」との判決を求め、被告代理人は、「原判決中被告敗訴部分を取消す。原告らの請求を棄却する。訟訴費用は第一、二審とも原告らの負担とする。」との判決を求め、かつ「原告らの控訴を棄却する。控訴費用は原告らの負担とする。」との判決を求めた。<以下省略>

理由

一、被告が徳島県那賀郡那賀川町大字苅屋字福園三二〇番地及び同所三二一番地の田を所有し、農業を営んでいること、右三二〇番地の田の北西隅の畦畔に訴外四国電力株式会社(以下単に訴外会社という)所有の農業用動力線引込みのための電柱(以下本件電柱という)があり、その上部に架設してある三本の電線は、被告所有の水揚小屋附近に設置された電柱(以下小柱という)を経て同小屋に通じると共に、別に被告が脱穀機械等動力用に使用するため、本件電柱に地上から、二、一メートルないし二、四メートルのところに設置されたスイツチボツクス内のコンセントに三本の引下線をもつて連絡されていること、小柱は本件電柱の西方約三〇メートルのところにあることゝ被告は、前記二筆の田(当時水田)及びその西側に並ぶ水田に早稲を作つており、昭和三〇年八月上旬頃、雀威し用として、凧(針金で直経約六〇センチメートルの円型の枠を作り、その中に紙を張つたもの)を作り、その両側に針金を着け、その一方を本件電柱の支線の碍子の上部に、他方を小柱の上部にそれぞれ結びつけ、風が吹くとこの凧が揺れるような施設をするとともに、別に前記水田の上方一、五メートル位の位置に細い針金を張りめぐらして同じく雀威しの施設をなし、その針金の一端を本件電柱の支線の碍子より下部に結びつけて柱の用に使用していたこと、昭和三〇年八月一六日の夕方頃(その正確な時刻については争いがある)右三二一番地の水田(三二〇番地の田の南側)に入り作業をしていた被告が、同水田の上方に張りめぐらされていた雀威しの針金を握つたため感電し、その場に倒れ、被告を救助しようとした被告の妻も、被告の身体に触れたところ、同女も感電したこと、その直後、訴外亡江川義夫が右水田内に二、三歩入つたところで、首に雀威しの針金を引つかけたために感電し、同所で感電のために死亡したこと、被告とその妻は、幸い生命に事なきを得たことその当時、雀威しの凧を引張つていた針金が、小柱附近で切れていたことはいずれも当事者間に争いない事実である。

そうして、<証拠>並びに弁論の全趣旨を綜合すると、前記昭和三〇年八月一六日の夕刻頃には、本件電柱に架設されていた電線及びこれよりスイツチボツクスへの引下線には電流が通じており、この引下線の下部はスイツチボツクスに入る附近において一部被覆が破れて裸線状態になつており、前認定のように小柱附近で針金が切れた凧の円型の枠が右スイツチボツクス附近に引つかかり、この凧の枠と引下線の裸線部分とが接触し、引下線に流れていた電気は、凧の枠、凧を引張つていた針金を通じて本件電柱の支線上部に通じ、更に支線の碍子が破損して絶縁の用を為さなかつたため、支線下部に通じ、そして支線下部に結びつけていた雀威しの針金に通じていたものであり、義夫並びに被告とその妻は、右雀威しの針金に通じていた電気に感電したものであることが認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

二、以上認定のような事実によると、義夫の死亡と被告が前記のように雀威し用の凧及び針金を設置したこととの間に因果関係があるものといわなければならない。勿論、訴外会社の占有、所有にかかる本件電柱の引下線の被覆が完全であり、支線の碍子が破損せず、電気絶縁が完全になされていたならば、本件事故は発生しなかつたであろうといえるけれども、被告の設置した前記雀威しがなかつたならば、本件事故は到底発生しなかつたこと明らかであるから、本件電柱及び引下線の設置保存の瑕疵が本件事故発生の一因をなしていたとしても、そのために、被告が前記のような雀威しを設置したことと本件事故との間に困果関係がないということはできない。

ところで、原告らは、被告が施設した前記雀威し用の凧及び田の上方空間に張りめぐらした針金は、民法第七一七条所定の土地の工作物であると主張するにつき、考察する。右施設は、土地の上方に人工的に作られた物であるから、一見右法条にいう土地の工作物と考えられないこともないが、同法条が土地の工作物の占有者、所有者に対し特に重い責任を負わせている法意は、他人に対して特に危険を及ぼす可能性の多い土地の工作物を占有ないし所有している者に対し、その設置または保存に瑕疵があつたために生じた損害について特別の責任を負わすことが、社会共同生活の理想に適するとの考えによるものと解されるところ、各雀威しの施設は、その物自体が他人に危険を及ぼすという可能性は殆どないものと考えられるから、これが占有、所有者である被告に同法条による責任を負わすことは酷に失するものであり、また前記のような雀威しの施設は、その設置状況から見ても、これを同法条にいう土地の工作物と解することは適当でない。従つて原告らの右主張は、採用できない。

次に、原告らは、雀威しが土地の工作物に当らないとしても、本件事故発生は被告の過失に基くと主張するので、この点について考えるに、現に電気が流れている電気施設に接着して、電気の良導体である針金を用いて本件のような雀威しの施設をすることは、何時どのような原因からこれに電気が流れ、そのために他人に不測の危害を及ぼすことがあるかも知れないのであり、そのようなことは、通常人の注意をもつてすれば、容易に判明するところであるといわなければならない。しかるに、被告は右のような注意義務を怠り、本件電柱に接触させて前記のような雀威しを施設したものであり、これに流れた電気に義夫が感電して死亡したのであるから、被告の右注意義務の懈怠が義夫の死亡を招いたものといわなければならず、被告は本件事故による損害を賠償する義務がある。

もつとも、本件事故は、訴外会社の占有所有にかかる本件電柱及びその附属物の設置保存の瑕疵が一つの原因となつたのではないかとの疑があるが、仮に、右瑕疵が本件事故の一因をなしていたとしても、前記のような被告の過失がなかつたならば、本件事故は発生しなかつたことは明らかであり、右工作物の瑕疵と被告の過失とが競合して本件事故の原因となつたといわなければならず、このような場合においては民法第七一九条のいわゆる共同不法行為が存するものと解するのが相当であり、同法条により、被告は訴外会社と連帯して責任を負担することになり、被害者に対しては、その損害全額を賠償すべき義務があることに変りはない。

三、ところで、本件事故は、凧を引張つていた針金が切れ、凧が本件電柱のスイツチボツクス附近に引つかかつたために発生したものであることは、前記認定の通りであるところ、被告は、右凧を引張つていた針金は、風力などでは切れないものであり、切れたとしても、凧が右スイツチボツクス附近に引つかかるというようなことは全く予測し得ないところであるから、被告が本件雀威しを施設したことに過失があるということはできないと主張する。<証拠>によると、凧を引張つていた針金は、太さ一ミリメートル位の新しい鉄線で強力なものであつたことが認められ、また、これが切断した原因については、これを明らかにするに足る証拠もなく、更に、右の線が切れた後、凧が本件電柱のスイツチボツクスに引つかかつた原因については、本件口頭弁論に現われた全証拠によつてもこれを明らかにすることはできない。しかしながら、右のような点が明確に認定できなくても、また仮に凧を引張つていた針金の切断、凧がスイツチボツクスに引つかかつたことが、第三者の行為によるものであつたとしても、被告が、電気設備に接触して本件のような雀威しの設備をしなかつたならば、本件事故の発生を防止できたものであることは、多言を要しないところであるから、被告の右主張は理由がない。また被告は、本件雀威しの針金を張りめぐらした水田は、被告の所有占有にかかるところであるから、他人が侵入するというようなことは予測できなかつたというが、他人といえども何らかの理由で水田内に入ることもあり得るわけであるから、そのような者に対して危険を及ぼすような施設をすることは、被告に過失があつたといわなければならず、被告の右主張も採用の限りでない。

更に、被告は、本訴請求の原因が不特定であるというが、原審において、原告らは、訴外会社に対する工作物の設置保存の瑕疵と被告の過失とが競合して本件事故が発生したものと主張し、右両者に対し損害賠償を請求していたのであり、右の主張自体が請求原因の不定といいえないことは勿論であり、弁論の全趣旨からして、原告らの被告に対する請求の原因は特定していると認められるから、被告の右主張も理由がない。

四、次に、被告は、本件事故について仮に被告に過失があつたとしても、本件事故は、(イ)義夫の特異体質に基因するものであり、(ロ)義夫が被告及びその妻の警告を無視して被告所有の水田内に侵入したために発生したものであるから、被告に損害賠償の責任はなく、(ハ)また、本件事故発生については、義夫にも過失があるから、損害額算定については、過失相殺がなされるべきであると主張する。

右(イ)の点については、義夫が特異体質であつたと認められる証拠もなく、かえつて、<証拠>によると、義夫は特異体質でなかつたことが認められる。本件水田上空の雀威しの針金に触れた被告及びその妻が死をまぬがれ、義夫のみが死亡した結果にはなつたけれども、前認定のように、義夫は首に針金を引つかけたのに比べ、被告は手を電線に触れた程度であること等を考えると、右のような結果のみから、義夫が特異体質であつたと断ずることはできない。

右(ロ)及び(ハ)の点については、なるほど既に被告が雀威しの針金に触れて感電し、呻き声をあげていたような危険な場所に、何ら防護の措置を採ることなく入つて行くというようなことは、通常あり得ないところである。しかしながら、義夫が被告の呻き声が感電による苦痛から発せられていると知つていたかどうかは頗る疑問であり、前記<証拠>によると、本件事故発生当時は、既に夕暮であつて、水田の上空に張られていた針金などは、急には気付かない程であつたと認められ、また<証拠>によれば、本件事故が発生した水田は、義失方の近くではあつたが、当時、義失は片岡武夫の経営する土木建築業に従事しており、自宅に居ることは少く、右水田の状況等はあまり良く知つていなかつたと認められるのであり、このような点と、他人が苦痛による呻き声をあげている場合に、これを救助するために(義夫が被告を救助するために水田に入つたものであることは、原告栄子(原審)本人の供述及び弁論の全趣旨により認められる。)行動しようとするような非常緊急の場合において、通常の場合のように周囲の状況を周到に調べて行動することを要求するのは無理なことであり、義夫が右水田に入つたことをもつて、本件事故が義夫自らの行動に基因するとの非難の当らないことは勿論、義夫に過失があつたということは、相当でない。被告の右主張はいずれも採用できない。

五、そこで、被告の賠償すべき損害額について考える。

(一)  <証拠>を綜合すると、義夫は本件事故による死亡当時三七才六ケ月余の健康な男子であり、大工としての技術をもち、主として土木建築請負業を営んでいる実兄片岡武夫に現場監督として雇われ、日給金六〇〇円で年間二五〇日程度働くかたわら、農繁期には春秋各三〇日位年間六〇日程度養父亡政一が経営していた農業に従事し、一日金六〇〇円相当の収入をあげ、結局年間金一八六、〇〇〇円の収入があつたと認められ、右認定を動かすに足る資料はない。而して原告らが農業経営を基礎として、農業経営上の収入により義夫の収入額を算出主張する部分は、<証拠>により、義夫は農業経営の主体でないことが明らかであるから、採用できず、また義夫の現場監督としての前認定以外の特別報酬等に関する原告らの主張も、<証拠>によつては、未だこれを認定するに充分でなく他にこれを認めるに足る証拠もないから、採用しない。なお義夫の生活費については、その額を認定できる明確な証拠がないが、原告栄子本人(原審及び当審)の供述、右供述から窺える江川家の生活程度その他諸般の状況から、義夫の死亡当時、その生活費は、一ケ月金八、〇〇〇円、年間金九六、〇〇〇円と認めるのが相当であり、これを左右するに足るような証拠もない。(原告栄子本人(原審)の供述の中に、義夫の生活費は一ケ月一万円程であつた旨の供述部分があるが、これは、同本人の当審における供述と対比して、そのまま信用することはできない。)義夫の可働年数については、同人の死亡時に近接した厚生省第九回生命表によれば、三七才六ケ月余の健康な男子の平均余命は三一年余であり、前認定程度の労働ならば、少くとも六〇才に達するまで、即ち、本件事故後二二年間は従前どおり可働し、同程度の収入をあげえたであろうことは、経験則上明らかであるから、右年間収入金一八六、〇〇〇円から、年間生活費金九六、〇〇〇円を差引いた年間の得べかりし利益金九〇、〇〇〇円に可働年数二二年を乗じた金額が義夫の利べかりし利益となり、その現価は、ホフマン式計算法により民法所定の年五分の割合による中間利益を控除した金一、三一二、二〇六円となる(佐藤信吉教授著「年金的利益の現在価格をホフマン法によつて求めるための数値表」(法曹時報一一巻二号所掲)により計算する。)。右金額が義夫が死亡により喪失した得べかりし利益中、即時に請求できる額であるというべきであり、原告栄子が義夫の妻、原告達司及び同恵里子が義夫の子であつて、いずれも義夫を相続したたことは当事者間に争いないから、右原告らは、相続分(各三分の一)に従い、義夫の被告に対する右損害賠償債権を承継取得し、被告に請求できる財産上の損害額は、各金四三七、四〇二円というべきである。

(二)  次に、原告らが請求する慰藉料について考えるに、訴外亡政一が義夫の養父で、原告栄子が義夫の妻、原告達司、同恵里子がいずれも義夫の子であることは、当事者間に争いがなく、<証拠>を綜合すると、亡政一は田畑一町一反余を所有耕作し、原告栄子がこれを助け、農業経営上の収入と、義夫の現場監督としての前記収入とを合せて、政一及び原告ら一家は、安定した生活を送つていたところ、義夫の急死に会い、政一及び原告らは、いずれも筆舌に尽し難い精神的苦痛を蒙つたこと、一方、被告は、一町三反歩の田畑を所有耕作し、安定した生活を営んでいることを認めることができる。これらの事実に、前記認定の被告の過失の程度、その他本件に顕われた諸般の事情を綜合考察すると、慰藉料の額は、政一に対しては金五〇、〇〇〇円、原告栄子、同達司、同恵里子に対しては各金七〇、〇〇〇円宛をもつて相当と認める。

(三)  被告は、損害額認定については、義夫の過失を斟酌すべきであるというが、この主張の採用できないことは前記四において説示したとおりであり、また、被告は、本件事故は訴外会社と被告の共同不法行為に因るものというべきであるから、被告の支払義務は、全損害額の半額が相当であると主張するが、仮に本件事故が訴外会社と被告の共同不法行為により発生したとしても、被告としては、民法第七一九条により連帯責任があるわけであるから、原告らに対しては損害全額の支払義務があることは多言を要しないところである。

(四)  被告が本件事故に関し、見舞金として金一〇〇、〇〇〇円を政一並びに原告栄子、同達司、同恵里子らに支払いをし、政一並びに右原告らがこれを受領したことは、原告らの自認するところである。原告らは、右金員は義夫の葬式費用に使つたというが、これを認めるに足る証拠もない。そうして、他に特段の事情も認められないから、右金員は、被告の損害賠償債務の一部に、政一並びに前記三名の原告らの各債権額の割合に応じて弁済に充てられたと解すべく、右各債権額の割合により計算すれば、原告栄子、同達司、同恵里子の分は各金三二、二七三円、政一の分は金三、一八一円になり、右金額がそれぞれ弁済に充当されたというべきである。そうすると、原告栄子、同達司、同恵里子の請求し得べき損害額は、いずれも前認定の損害額から右充当金額を差引いた金四七五、一二九円であり、同様に政一の請求し得べき損害額は、金四六、八一九円となる。

その後政一が昭和三五年六月三日死亡し(記録中の除籍謄本参照)、原告幸子(政一の長男亡瀬吉の長女)が二分の一、同達司、同恵里子(いずれも政一の養子亡義夫の子)が各四分の一宛の割合で、政一の代襲相続をしたことは、当事者間に争いがないから、前記政一の損害賠償請求債権額に対し、原告幸子は金二三、四〇九円(円未満切捨)、同達司、同恵里子は各金一一、七〇四円(円未満切捨)宛相続したことになる。

(五)  右説示のとおりであるから、被告は、損害賠償として、原告栄子、同達司、同恵里子に対し各金四七五、一二九円及びこれに対する本件損害発生の日の翌日である昭和三〇年八月一七日から完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金並びに原告幸子に対し金二三、四〇九円、同達司、同恵里子に対し各金一一、七〇四円及び右各金員に対する右各原告らの請求する限度である昭和三一年一月二一日(記録上本件訴状送達の日の翌日と認められる。)以降完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払うべき義務があり、原告らの請求は、右の限度において理由があるから認容できるが、その余の分は失当として棄却を免れない。

六、よつて、原告らの本件控訴は一部理由があるから、民事訴訟法第三八六条に則り、原判決を本判決主文第三、第四項のとおり変更し、被告の本件控訴は理由がないことに帰するから、同法第三八四条第一項に則りこれを棄却し、訴訟費用の負担につき、同法第九六条、第九二条、第九三条を、仮執行の宣言につき、同法第一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官浮田茂男裁判官水上東作 石井玄)

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